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六覺燈物語 その二「仕える身」

 

それからも鬼のように喋りまくりました。
「僕はですね、本当に美味しい焼き鳥焼けるんですよ。
本当にトリキモなんか日本一やと思います!
だから居抜きの店舗も改装してカッコいい焼き鳥屋を作ろうと思ってるんですよ!
僕の実力がやっと発揮できるとですよ!
絶〜〜対!負けんとですよ!
今までは田舎やったからダメやったんですよ!

味のわかるお客さんが少なかったんでしょうね。

東京、大阪の焼き鳥を食べ歩きましたけど負けてないすよ!
自信持ちましたよ。
少しでも都会に出たらすぐに大繁盛しますよ!
まして、天神ですよ!
お客さん沢山来るに決まってますよ!」

味のわかるお客さんが少なかったやと…
よう、そげなことを口走ったもんや…
あの頃の自分に会ってぶん殴ってやりたい!
ボコボコにしてやりたい!

全部言い訳やん…
思い出すと本当に恥ずかしい…
責任転嫁してるだけの
言い訳ばかりの人生やった。

そしてその天神店は一風堂の河原社長の口利きで、当時大人気だった「がんばらんば」さんの居抜き譲渡だったこと。
高い値段だったこと。
大台をはるかにこえる、通常の4〜5倍くらいの値段だったこと。
がんばらんばの川内社長とはお友達になったこと。
川内社長は大変私によくしてくれてること。
そんな話までしてしまっていました。

実を言うと、本当は自信なんてありませんでした。
怖くて怖くて
契約書にサインしてからは眠れなくて

「やっぱやめよう
怖い。
失敗したら家族は路頭に迷うやろ…
でも、このままやったら生活できんし…」

その不安を打ち消すための食べ歩き行脚でもあったのです。

「あらあら、お兄ちゃん。
そんな、りきまんでも…
そんなに繁盛店さんのあとやったら譲られる方の想いとか沢山あるんのとちがいますか?
どんな小さなお店でも店主の想いとかがつまってますよ。

改装なんかせんでよろし!

自分の手で綺麗にお掃除してピカピカに磨いてお店はじめられたらどうですか?」

「うっ…」

次の瞬間
涙が溢れて止まらなくなりました。
号泣してしまったのです。

その言葉で
今まで突っ張れるだけ突っ張ってた心が
ポロポロとくずれていってしまったような。

「お兄ちゃん、
世の中は二通りの人間しかいませんよ。

仕えさせる身と
仕える身です。

私達飲食店はお客さんに仕える身です。

徹底的に仕えてみてはどうでっしゃろ。

徹底的に仕えたらカッコええですよ!

お兄ちゃん
そんなにりきまんでも商売はできますよ。
あんまり、りきんどったらお客さんビックリして逃げはりまっせ。
商売はそんなんと違いますよ。
お客さんに仕えることを忘れてはあきまへんよ。

俺が俺がの我を捨てて
おかげおかげの下で生きよ

って言うてねぇ。

そんな勝つとか負けるとか…

商売させてもろうてるだけても有難いですやん。」

間違ってた!
勘違いしてた!

田舎だったから
地方だったから
お客さんが少なかったんじゃなくて…
私がこんなんだったから
お客さんが少なかったんだ
私が原因やったんや…
私に問題があったんや…

バカか…

私のことを、
見抜いてしまわれたんでしょうね。

お金がないこと
自信が本当はないこと
商売間違ってること
イキりまくってるだけだと

一瞬にして
見抜かれてしまったのです。

それから福岡へ帰り
2000年5月にがんばらんばさんの居抜き店舗を
ピカピカにお掃除し、天神店をオープンしました。

その3日目に
六覚燈のオヤジさんが天神店に来てくださったのです。

 

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